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世界のIAIGs指定状況

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前回のエントリでご紹介したとおり日本のIAIGsが公表されたので、じゃあ世界ではどうなっているのかも見ておきましょう。

2020年7月1日にIAIS(保険監督者国際機構)が各国地域の保険監督当局が公表したIAIGsをまとめたリストを公表しています。

この時点で掲載されているのが30グループ。金融庁が公表した分を合わせると34グループということになります。

本社所在地域別には以下のとおりです。

  • EU:21グループ
    • フランス:8グループ
    • 英国:4グループ
    • ドイツ:3グループ
    • オランダ:2グループ
    • オーストリア:1グループ
    • ベルギー:1グループ
    • イタリア:1グループ
    • スペイン:1グループ
  • 米国:6グループ
  • アジア:7グループ
    • 日本:4グループ
    • 香港:2グループ
    • シンガポール:1グループ

国・地域別にみたときにはフランスが最多というのが少々意外でしたが、まあここはEUをひっくるめて考えるのが適切なのかもしれません。ちなみにEUの保険監督規制を担うEIOPA(欧州保険年金監督局)は5月18日にIAIGsのリストを公表していますが、そこでは英国を除く17グループが記載されています。英国のほうは監督当局であるPRA(健全性規制機構)が5月28日に公表していますね。

さて、最初に示したIAISのリストを見ると、おもしろいことに気がつきます。リストにはIAIGsに該当する保険グループと担当となる監督当局、およびその所在国(地域)が記載されており、ほとんどは国(地域)と監督当局が一対一に対応しているのですが、米国だけは異なっているのです。米国は州によって保険規制が異なり、したがって担当監督当局といえば州の保険監督当局になるためです。つまり、米国は州を監督の単位としてみるか、「アメリカ合衆国」という国を単位としてみるか、という二つの見方があるのです。前者の立場をとると、IAIGsの定義の一つが「3つ以上の国」ではなく「3つ以上の州」で営業していること、となります。米国では州をまたいで営業している保険会社なんていくらでもあるので、これだと米国でIAIGsに該当する保険会社が爆増してしまいます。このため、IAIGsの定義を定めるところで、わざわざ「米国は一つの国とみなすが、EUメンバー国はそれぞれ別扱いとする」ということが書かれています(ICP CF23.0.a.5)。

米国に関する、この「連邦か州か」という単位の扱いに関しては悩ましく、IAIGsに対する資本規制であるICSの計算にも影響を及ぼしています。ICSはグループ全体の連結ベースでの規制資本を計算するのが基本的な考え方ですが、米国は、単体ベース(要するに州ごと)の規制資本をまず計算してそれをグループ全体で合計する「合算法(Aggregation method)」を主張しています。IAIGsの指定にあたっての判断は米国を一つとして見るが、ICSの計算は州ごとにやることを認めてほしい…ってことですね。まあ実務負荷を考えるとわからなくはない主張ではありますが。

上述の34グループのIAIGsも監督当局が公表したものですし、他にまだ公表されていないものもあるかもしれません。ICS自体もモニタリング期間中は公表されない扱いになっていますので、どれくらいのことが公表情報から得られるのかは不透明ですが、合算法の扱いも含めて今後の状況には要注目かと思います。


日本から〇〇生命保険〇〇〇をもつ会社がなくなってしまいました

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(1日遅れのエントリですが)新年度になりました。この4月1日付で、生命保険業界には二つの変化がありました。

(1) ソニー生命とソニーライフ・ウィズ生命が合併

昨年の12月にアナウンスされていたことですが、ソニー生命ソニーライフ・ウィズ生命が4月1日付で合併しました。これにより、日本の生命保険会社数は全部で41社となりました。

…って書いてたら、朝日生命の子会社が生命保険業免許を取得してるじゃないですか!

本日、朝日新会社設立準備株式会社に対し、保険業法第3条第1項の規定に基づき生命保険業の免許を付与しました。


(参考)保険会社の概要

1.商号 : 朝日新会社設立準備株式会社
               ※免許取得後に「なないろ生命保険株式会社」へ商号変更
2.本店所在地 : 東京都新宿区四谷1丁目6番1号
3.代表者 : 代表取締役社長 石島 健一郎
4.資本金 : 45億円
5.株主構成 : 朝日生命保険相互会社 100%
6.営業開始日 : 令和3年10月1日(予定)

ということで10月にはまた42社になるようです。

(2) チューリッヒ生命が日本法人化

チューリッヒ生命はこれまで「チューリッヒ・ライフ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店」、つまり日本の法人ではなく、外国法人の日本支店でしたが、日本法人「チューリッヒ生命保険株式会社」となりました。正確には、日本で設立された法人「チューリッヒ生命保険株式会社」に「チューリッヒ・ライフ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店」の保有する全契約が移転されました。

これに伴い、4月1日付の官報で以下の金融庁告示第19号が出されています。

チューリッヒ・ライフ・インシュアランス・カンパニー・リミテッドが日本における保険契約の全部に係る保険契約の移転をしたことに伴い、保険業法(平成七年法律第百五号)第二百十条第二項及び第二百七十三条第一項第一号の規定により、同社の同法第百八十五条第一項の免許がその効力を失ったので、同法第二百七十四条第四号の規定に基づき、告示する。

前にも書いたのですが、日本で生命保険業を営むことができる免許は「生命保険業免許」と「外国生命保険業免許」の2種類あります。外国生命保険業免許は外国法人(の日本支店)が生命保険業を営むための免許で、保険業法第185条に規定されています。「チューリッヒ・ライフ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド日本支店」はこの免許に基づいて営業していたわけですが、上述のとおり今回の日本法人への移行により免許の効力を失ってしまいました。これにより、日本で外国生命保険業免許をもつ会社がなくなってしまったわけです。

まあ、これまでの保険契約は日本法人に移転されてもまったく同様に保障されますので、実態的に何かが変わるというわけではありません。しかしインシュアランス生命保険統計号がこれらの免許ごとに統計情報を分けられていたりするので、ごくごく一部の実務者(私を含む)にとっては少し感じるところがありますね。

世界のIAIGs指定状況(2021.4.1アップデート版)

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少し前に世界のIAIGs指定状況をお知らせしました。2021年4月1日時点でIAIS(保険監督者国際機構)が各国地域の保険監督当局が公表したIAIGsをまとめたリストによると、世界で48あるIAIGsのうち47が公表されています。

本社所在地域別には以下のとおりです。

  • EU:21グループ
    • フランス:8グループ
    • 英国:4グループ
    • ドイツ:3グループ
    • オランダ:2グループ
    • オーストリア:1グループ
    • ベルギー:1グループ
    • イタリア:1グループ
    • スペイン:1グループ
  • スイス:5グループ
  • 北米:11グループ
    • 米国:8グループ
    • カナダ:3グループ
  • アジア太平洋:8グループ
    • 日本:4グループ
    • 香港:2グループ
    • シンガポール:1グループ
    • オーストラリア:1グループ
  • 南アフリカ:2グループ

前回のエントリでは34グループありましたが、そこから増えたのは、スイス(5)、米国(2)、カナダ(3)、オーストラリア(1)、南アフリカ(2)です。通常は、もうすでに指定がなされているものを国として開示するかどうかの判断になるので、ある国の指定グループ数が前回と異なっているという状況は発生しません。ただし米国は前回書いた通り例外で、州ごとに監督当局が異なるため、前回の指定数6から今回は8に変わっています。ニューヨーク州の分が追加されていますね。

じつは2月17日の時点で40グループまで開示されており、残る8グループはスイスと中国だろうと思っていました。スイスはこういう個別企業のことは開示しないイメージがあったのですが、今回の開示には入っていますね。南アフリカにIAIGsがあるのは盲点でしたが、開示された2社はいずれもアフリカで広く展開している保険会社であり、名前を見ればIAIGsに入るのも納得です。

ということで、開示されていないIAIGは1社となりました。前回の推測によれば残るは中国…ということになりますが、IAISの公表によれば、48の指定IAIGsは「16の国または地域(jurisdictions)」からとされており、今回までに開示したのは「16の国または地域」となっています。つまりこれ以上開示国が追加される余地がありません(香港については"China, Hong Kong"と書かれており、中国本土とは別のjurisdictionの扱いになっていると思われます)。

つまりあと1社についてはjurisdictionを増やさない形で追加がなされる必要があるわけですが、それがありえそうなのは1カ国しかありません。…米国です。米国は、ニューヨーク、ネブラスカ、ペンシルベニア、デラウェア、マサチューセッツ、ニュージャージー、ミズーリの7つの州がこれまでにIAIGsを公表していますので、これ以外のどこかの州にIAIGがある、ということなのでしょう。

さて、48のIAIGsのリストが完成するのはいつなのでしょうか。答え合わせをしてみたいものです。

こどもの日?子どもの日?子供の日?

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今日はこどもの日です。こどもの日は国民の祝日に関する法律(昭和23年法律第178号)において次のように定められています。

こどもの日 五月五日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。

父は感謝されないのですね…。

それはともかく、ご覧のとおり「こども」とひらがなで書かれています。じゃあ法律はみんな「こども」とひらがなで書いているのかと思い、e-Gov法令検索で調べてみました。

  • 「こども」を含む法律:53
  • 「子ども」を含む法律:119
  • 「子供」を含む法律:1

と、「こども」「子ども」「子供」が全部あるのですが、面白いのは「子供」を含む法律が一つしかなく、しかもそれが公職選挙法(昭和25年法律第100号)なんですね。該当の条文を抜粋します。

(投票所に出入し得る者)
第58条 選挙人、投票所の事務に従事する者、投票所を監視する職権を有する者又は当該警察官でなければ、投票所に入ることができない。
2 前項の規定にかかわらず、選挙人の同伴する子供(幼児、児童、生徒その他の年齢満18年未満の者をいう。以下この項において同じ。)は、投票所に入ることができる。ただし、投票管理者が、選挙人の同伴する子供が投票所に入ることにより生ずる混雑、けん騒その他これらに類する状況から、投票所の秩序を保持することができなくなるおそれがあると認め、その旨を選挙人に告知したときは、この限りでない。
3 選挙人を介護する者その他の選挙人とともに投票所に入ることについてやむを得ない事情がある者として投票管理者が認めた者についても、前項本文と同様とする。

(教育者の地位利用の選挙運動の禁止)
第137条 教育者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成18年法律第77号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位を利用して選挙運動をすることができない。

(連呼行為の禁止)
第140条の2 何人も、選挙運動のため、連呼行為をすることができない。ただし、演説会場及び街頭演説(演説を含む。)の場所においてする場合並びに午前8時から午後8時までの間に限り、次条の規定により選挙運動のために使用される自動車又は船舶の上においてする場合は、この限りでない。
2 前項ただし書の規定により選挙運動のための連呼行為をする者は、学校(学校教育法第1条に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律第2条第7項に規定する幼保連携型認定こども園をいう。以下同じ。)及び病院、診療所その他の療養施設の周辺においては、静穏を保持するように努めなければならない。

ご覧の通り、定義がなされているのは「子供」だけで、「こども」は「認定こども園」という単語の一部として出てきています。実は他のほとんどの法律も同様で、「こども」が「認定こども園」という単語の一部になっていない法律は「国民の祝日に関する法律」と「こどもの国協会の解散及び事業の承継に関する法律(昭和55年法律第91号)」の2つしかありません。こどもの国協会というのは、横浜市青葉区にある「こどもの国」(現在の上皇のご成婚を記念して設立された施設です)を管理していた団体です。

さて以上見てきたことをまとめると、

  • 「子供」は公職選挙法にしか現れない、珍しい表記。
  • 「こども」は「こどもの日」「こどもの国」「認定こども園」ぐらいしか法律に現れない。
  • その他はだいたい「子ども」表記になっている。

ということになります。つまり法律上の表記としては「こどもの日」でなく「子どもの日」のほうが自然だった?

世界のIAIGs指定状況(2021.7.2アップデート版)

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さて、6月28日に2021年のICSの仕様書も発表されました。これに合わせる形で(なのかどうかは知りませんが)、IAIGsのリストも2021年7月2日現在に更新されています。

IAIGsの指定は最低1年ごとに更新することとなっています。最初のリスト開示が2020年7月1日だったので、今回のリストは2021年版といっていいかと思います。じっさい、IAIGsのグループ数は、これまでの48から49に増加しています。また、IAIGsを有する国または地域(jurisdiction)の数も、16から18に増加しています。

国または地域の数が2つ増えたにもかかわらず、IAIGsの数は1つしか増えていません。ということは、IAIGsでなくなったグループがあるということですね。具体的なIAIGsのリストを見ると、英国のRSA Insurance Group plcがリストから消えています。カナダのIntactとオランダのTrygに買収されたためのようです。

ということで、現在わかっているIAIGsは、国または地域別には次のとおりになります。

  • フランス:8グループ
  • 英国:3グループ
  • ドイツ:3グループ
  • オランダ:2グループ
  • オーストリア:1グループ
  • ベルギー:1グループ
  • イタリア:1グループ
  • スペイン:1グループ
  • スイス:5グループ
  • 米国:8グループ
  • カナダ:3グループ
  • 日本:4グループ
  • 香港:2グループ
  • シンガポール:1グループ
  • オーストラリア:1グループ
  • 南アフリカ:2グループ
  • 不明:3グループ

不明となっている3グループのうち1つは前回のエントリで述べたとおり米国と思われ、また全体で国または地域の数が18と公表されていることから、あとの2グループは上記に含まれない国または地域となります。この2つの国または地域から今後IAIGsの開示がなされるのか(それともなされないのか)注視していきたいと思います。

アクチュアリー試験の合格まで何年かかるのか?(2020年度試験合格者版)

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2020年度アクチュアリー試験の合格者が発表されました。

まず大きな情報としては、全科目合格者が100名となったということが挙げられます。この数は現在の試験制度になってから最多ではないかと思います。過去20年ほど調べましたが、これまでの最多は2014年度の95名でした。

さて、その全科目合格者100名の、全科目合格までの年数分布は次のようになりました。

  • 3年:3名
  • 4年:6名
  • 5年:7名
  • 6年:14名
  • 7年:9名
  • 8年:2名
  • 9年:9名
  • 10年:9名
  • 10年超:34名

合格者数が最も多いのは6年(14名)となっているものの、前回と比べて全般的にやや年数が伸びています。平均は9.7年でした。

前回は5年と8年に山があったのですが、5年の山が6年にずれ、8年の山が10年超に向けてよりなだらかに分布するようになったイメージです。メジアンも9.5年となっており、全体的に年数の長いほうに分布がずれた印象がありますが、これが継続するのかどうかはわかりませんね。

全体的に年数が長くなったということは、長らく試験を受けていた人の中に合格者が出たということでもあります。今回、20年超が3名いまして、これもおそらくは過去最多ではないかと思います。

書評『法令読解ノート 改訂版』

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11年前、「法令読解ノート」というブログエントリを書いたんですよ。

そうしたらですね… 先日、そのエントリに次のようなコメントが。

●上記の書評でご紹介いただきありがとうございました。お蔭をもちましてこの3月10日に、発行後10年以上を経て、同書の改訂版を発行するに至りました。つきましては、唯一の書評に敬意を表して謹呈させていただきたいと思っていますので、お届け先をお知らせください。
●なお、改訂は、引用法令をこの間の改正に対応させたほか読み易さ分かり易さの観点から、焦点を絞り、スリム化(約15頁減)したものです(価格据置)。
●リバウンドの兆しが報道され始めましたが、ブレークスルー感染もある中では、「よく食べ良く寝て適度の運動に溜め込み過ぎず」により免疫力を維持・向上させるしかないと思われます。どうかご自愛の上、お過ごしください。

ということで出版元の公益社団法人 全国労働基準関係団体連合会様から改訂版をご恵投いただきました!

法令読解ノートの表紙

さっそく拝読いたしましたよ。

この本は筆者の畠中信夫氏が白鴎大学法学部で教鞭をとっておられたときに法学部の1年生を対象とした講義レジュメが元になっているため、冒頭が次のような文から始まります。

本書をひもとく人の大部分は、いわゆる「六法」を手元に持っておられると思います。

手元に持ってなくて申し訳ありません… なのにご恵投までいただいて本当に申し訳ありません…

が、そんな法学門外漢の私にもとても役に立ったんですよ。このブログをご覧になる方はアクチュアリーが多いと思いますが、アクチュアリーの主な活躍フィールドである保険や年金の世界が免許業種や登録業種である以上、法令とは無縁ではいられません(まあ免許や登録が不要でも法令とは無縁ではいられませんが…)。そのときに「法令の読み方」を知らなかったらどうにもならないわけです。

上述の畠中氏の講義を受講した学生の感想文にはこうあります:

…今まで全く法律に触れたことはなかったので、六法の見方や、法令番号や、法令の構成や、ただし書き、柱書きの意味や、法令用語の使い方など、法律を学ぶための基礎の基礎を教えてもらって、本当に有難いと思います。正直、受講して良かったと素直に思える講義だったと思います。…

本書を読んで、私もまったく同様の思いです。

この『法令読解ノート』には書かれていないことですが、法令には「一般の人が読んでわかることを配慮したもの」と「専門家しか読むことを想定していないもの」があります。で、保険業法は後者の典型です。前回のブログエントリにも書いた通り、『法令読解ノート』の中で「重要文化財級の条文」とまで書かれてしまうようなものが出てきます。たしかに保険業法施行規則第1条の2の2第1項第1号ハ(1)(iv)って読ませる気ないとしか思えませんよね。保険関係者が法律の読み方に慣れるためには保険法の条文構成から見るのがいいかもしれません。

とにかくこの『法令読解ノート 改訂版』、今まで誰も教えてくれなかった法令の初歩の初歩を理解するには唯一最適の書です。現在はまだ全国労働基準関係団体連合会のサイトでしか入手できないようですが、Amazonで入手可能になりましたらまたお知らせしたいと思います。

 

世界のIAIGs指定状況(2022.7.26アップデート版)

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国際的に活動する保険グループ(Internationally Active Insurance Groups; IAIGs)のリストについて、7月26日にアップデートされていました。

IAIGとは基本的に以下の要件を満たす保険グループとされます。IAIGに指定されると、国際的な保険資本要件ICS(Insurance Capital Standard)をはじめとする規制要件に服することとになります(ただしICSは現在モニタリング期間中であり、まだ規制は実施されていない)。

  • 国際的活動要件
    • 3以上の国または地域で保険料が計上されており、かつ
    • 本国外のグロス収入保険料が、グループ合計のグロス収入保険料の10%以上あること
  • 規模要件
    • 総資産が500億米ドル以上、または
    • グロス収入保険料が100億米ドル以上

2022年7月26日現在、IAIGの数は49。これまでは具体的な保険グループ名のわからないIAIGがあったのですが、今回初めてすべてのIAIGがグループ名とともに公表されました。

国・地域別の内訳は以下のとおりです。

  • 欧州:26グループ
    • フランス:8グループ
    • スイス:5グループ
    • ドイツ:3グループ
    • 英国:3グループ
    • オランダ:2グループ
    • オーストリア:1グループ
    • ベルギー:1グループ
    • フィンランド:1グループ
    • イタリア:1グループ
    • スペイン:1グループ
  • 北米:13グループ
    • 米国:9グループ
    • カナダ:4グループ
  • アジア太平洋:8グループ
    • 日本:4グループ
    • 香港:2グループ
    • シンガポール:1グループ
    • オーストラリア:1グループ
  • 南アフリカ:2グループ

直前の公表は2022年2月10日現在のもので、その時点ではIAIGは48グループの名前が公表されていました。その時から新たに追加されたのはフィンランドのSampo Groupです。なんでEU加盟国なのに社名公表してなかったのか、謎です…(今回初めてIAIG要件に該当したのかもしれませんが)。

さて、今までは社名未公表のIAIGがあったので、それがどこかといろいろ推測してきましたが、今回の全社公表でIAIGのリストが完成したといえます。ICSのモニタリング期間は2024年に終了する予定であり、国際的な保険監督規制の体制に向けていよいよ整ってきたといえるかもしれません。


2022年度第1四半期:コロナ関連給付の急増

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生保各社の2022年度第1四半期業績が発表されました。その中での新型コロナウイルス感染症に係る支払の状況についてまとめてみます。

2022年度第1四半期報告で新型コロナウイルス関連の保険金等の支払状況を公表しているのは、私の調べた範囲では以下の会社でした:

  • 日本生命グループ
  • 第一生命グループ
  • 明治安田生命
  • T&Dグループ
  • かんぽ生命

(収支への影響額のみ開示している会社は他にもあるのですが、ここでは件数および支払金額を開示している会社を挙げています。)

これらの会社について前年・前々年同期と比べてみましょう。なお、かんぽ生命は2020年度・2021年度の第1四半期の金額を開示していないため、以下の集計ではかんぽ生命を除いています。

まずは死亡保険金額から。

  • 2020年度第1四半期:23億円(221件)
  • 2021年度第1四半期:117億円(1,583件)
  • 2022年度第1四半期:107億円(1,553件)

第1四半期でみると、2022年度は2021年度と同程度の水準となっています。ちなみにかんぽ生命を含めた2022年度第1四半期の保険金額は174億円(3,567件)となっています。

次に入院給付金です。

  • 2020年度第1四半期:3億円(1,687件)
  • 2021年度第1四半期:40億円(32,966件)
  • 2022年度第1四半期:783億円(651,368件)

…とんでもない激増ぶりです。かんぽ生命を含めると2022年度第1四半期の給付金額は883億円、件数はじつに904,643件です。

実は2021年度通年での入院給付金支払額は609億円(上記の会社のほか、住友生命グループを含む)ですので、2022年度は最初の3ヶ月だけで2021年度の総額を上回っています。オミクロン株の感染力の強さがよくわかります。

しかもこの金額は2022年6月末までの数字ですので、基本的に第6波までしか含まれていません。第6波は2021/12/15~2022/04/30としている資料がありましたのでこの定義に従うと、この間の全国の感染者数の平均は44,920人/日、最多は2月5日の104,169人です。一方、7月以降の感染者数は直近(8月13日)までの平均が140,066人。したがって第7波の入院給付金額の影響はさらに増加する可能性があります。

新型コロナウイルス感染症の発症から給付金の請求・支払までは一定のタイムラグがあるため、今回の第1四半期は2月にピークを迎えた第6波の影響がほぼそのまま支払に現れたものと思われます。第7波がどこまで続くのかは現時点では不透明ですが、第2四半期だけでなく第3四半期以降も影響が続くかもしれません。

体調不良であることを自覚してから受診の前に保険加入するモラルリスクの存在も指摘されており、コロナ感染に対し給付を行う保険について各社が見直しを検討するようになってきました。2020年ごろは欧州や米国の保険会社がコロナによる混乱の極みにありましたが、日本の生保はこれから本格的な対応を迫られそうです。

2022年度上半期のコロナ関連給付

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生保各社の2022年度上半期業績が発表されました。その中で以下の会社が新型コロナウイルス関連の保険金等の支払状況を公表しています。

  • 日本生命グループ
  • 第一生命グループ
  • 明治安田生命
  • 住友生命グループ
  • T&Dグループ
  • かんぽ生命

これらの会社について時系列でみてみます。なお、かんぽ生命は2020年度・2021年度の上半期の金額を開示していないため、以下の集計ではかんぽ生命を除いています。

まずは死亡保険金額から。

  • 2020年度上半期:55億円(526件)
  • 2020年度下半期:153億円(2,220件)
  • 2021年度上半期:256億円(3,611件)
  • 2021年度下半期:270億円(3,718件)
  • 2022年度上半期:244億円(3,790件)

2021年度上半期からは大きな変動なく推移しているように思われます。ちなみに厚生労働省が公表しているデータによれば、日本での死亡者数は次の通りです。

  • 2020年度上半期:957人
  • 2020年度下半期:7,589人
  • 2021年度上半期:8,482人
  • 2021年度下半期:10,540人
  • 2022年度上半期:16,614人

死亡から支払までは一定のタイムラグがあるので、2022年度上半期の死亡数の増加が生保の2022年度下半期の保険金支払に現れるのかどうかが気になります。

次に入院給付金です。

  • 2020年度上半期:10億円(6,546件)
  • 2020年度下半期:47億円(42,000件)
  • 2021年度上半期:145億円(113,596件)
  • 2021年度下半期:409億円(327,329件)
  • 2022年度上半期:2,395億円(1,965,900件)

第1四半期に引き続き激増です。ただ、この入院給付金のほとんどがいわゆる「みなし入院」によるものであり、2022年9月26日からはみなし入院の支払対象が重症化リスクの高い人に限定されたことから、2022年度下半期には落ち着くのではないでしょうか。





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