保険会社が責任準備金を積み立てる際の重要な計算基礎の一つである標準利率。これが改定されることが決定しました。
まずはその決定方法を確認しておきましょう。具体的な規定は平成8年大蔵省告示第48号にありますが、概要は以下のとおりです。
- 過去の10年国債応募者利回りを基礎データとする。
- 毎年10月1日における、「過去3年の10年国債応募者利回りの平均」と「過去10年の10年国債応募者利回りの平均」のうち低いほうを対象利率とする。
- 対象利率に安全率係数をかけたものを基準利率とする。
- 基準利率が現在の標準利率から0.5%以上乖離していた場合には、翌年4月からの標準利率を改定する。
- 改定後の標準利率は、基準利率を0.25%単位で丸めた値。
9月1日に10年国債の入札があり、応募者利回りが決定したため、来年4月から適用される標準利率が決まりました。具体的な数値は次のようになっています。
- 現在の標準利率は1%
- 「過去3年の10年国債応募者利回りの平均」は0.361%
- 「過去10年の10年国債応募者利回りの平均」は0.983%
- したがって対象利率は0.361%
- 対象利率に安全率係数をかけた基準利率は0.325%
- 基準利率が現在の標準利率から0.5%以上乖離しているので、来年4月からの標準利率は改定される
- 改定後の標準利率は、0.325%を0.25%単位で丸めた0.25%
さて、では今後この標準利率がさらに変わることはあるでしょうか? 変わるためには0.5%以上の乖離が必要なので、基準利率が0.75%以上となるかマイナス0.25%以下となるか、いずれかの状態が生じることが条件となります。
まず上がるほうから。基準利率が0.75%以上となるためには、対象利率が0.834%以上とならなければいけません。しかし現在の金利環境を見ると、最長の40年国債でも利回りは0.5%そこそこ…当面、生じることはなさそうです。
ではマイナス0.25%以下になることはあるでしょうか。7月の10年国債の入札時には応募者利回りがマイナス0.243%まで低下し、「すわ!」と思われましたが、それ以降はやや持ち直しており、こちらも生じる可能性は低そうです。しかしそもそも10年金利がマイナスになることすら昨年までは想像もできなかったので、もはや何が起こるか分かりません。
最近の債券市場サーベイにも表れていますが、国債市場の機能度の低下は目を覆うものがあります。それが規制上の重大な要素に直結している生命保険業界の関係者としては、一刻も早く金利市場が正常化してほしいものです。